合法性と帝国ーー台湾を事例とした日中関係における”正義”をめぐる戦い Legality and Empire: The Battle for "Justice" in Japan-China Relations in Taiwan

02 May 2019

戦争とは、境界線を尊重するものではなく破壊するもの である。対照的に戦争の終結とは、主としてそれらの境界 を物理的に全く違った場所に再構築することである。その ように境界が移動することで、戦争終結から戦後までの間 に実際には何が起きたのかが隠蔽され、我われの想定は妥 当性を失ってしまう。台湾人作家の呉濁流が述べたよう に、日本が降伏して後のポスト帝国時代という混乱のなか で台湾人は実質的に歴史から忘れ去られ、 歴史の陥穽 に陥った。彼らのアイデンティティと物語は、大日本帝国 の突然の崩壊とともに消え去っ 〉 〈 た。第二次世界大戦に関す る西洋史のベストセラーでは、ヤン・キョンジョンの究極 的な事例を引用しつつこの破綻が強調され 〉 〈 る。ヤンは朝鮮 人として生まれたが、日本統治下の朝鮮で大日本帝国の臣 民として徴兵され、のちにソ連の捕虜となり赤軍に従軍し た。さらに捕虜としてドイツ軍に徴用され、第二次世界大 戦終盤のヨーロッパ戦線においてアメリカ兵に投降した。 著名な歴史学者であるアントニー・ビーヴァーは、忠誠心 を民族性と安易に結びつけて語ることの危うさを、ヤンを 事例として検証している。ただ東アジアを研究する者に とって、ヤンのストーリーはそれほど動揺すべきものでは ない。